試し読み版:
朝倉 慎一
抄録
一、はじめに
二、原文の字の正しさ
三、先行研究の概観
四、通例の試訓と意訳への疑問
五、表意兼表音文字
六、試訓と意訳の提案
●歌のまとめ
七、考察
八、まとめ
九、終わりに
参考文献
奥付
万葉集巻一・九の額田王の難訓歌「莫囂圓隣歌」について、
恣意的な誤字仮定や義訓を排し、辞書に基づく客観的な試訓と全文意訳を提示する。
難訓部分は「表意兼表音文字」という掛詞的修辞法の導入によって解決した。
歌全体で明確に意味が通り、題詞に沿う意訳を得ることができた。
原文の正しさと意訳の妥当性を論証する。
萬葉集の額田王の難訓歌、俗称で、莫囂圓隣歌(ばくごうえんりんか)(巻一・九)は、
訓に諸説[武田][NK]があり、まだ、定訓も全文の意訳も無い。
本稿は、試訓と、「明確で詳細」な意訳の「全文」を提案する。
本稿は、恣意的な「誤字の仮定」や「義訓」をせず、
できるだけ「主観を排除」し、「客観性」を確保する。
難訓部分には、掛詞が使われていることに気が付いた。
『表意(ひょうい)兼(けん)表音(ひょうおん)文字(もじ)』という掛詞を定義して、導入すると、
意訳は、「見事に、明確かつ詳細に」、掛けた意味が通る。
「全文」の意味は、「掛詞を展開した全て」という意味である。
題詞『紀の温泉(ゆ)に幸(いでま)しし時に、額田王の作れる歌』の通り、
莫囂圓隣歌(ばくごうえんりんか)は、明確に、温泉の『湯気の文脈』になっていて、
「有間(ありまの)皇子(みこ)の亡き面影を湯気に映して、昇天を想う歌」
であることが判明する。
[中西] 中西進『万葉集 全訳注原文付』講談社 一九七八年
[武田] 武田祐吉『増訂 萬葉集全註釋』角川書店 一九五六年
[OH] 澤瀉(おもだか)久(ひさ)考(たか)『萬葉集注釋』中央公論社 一九五七年
[元] 藤原行成筆『元暦校本万葉集』 二玄社 一九九四年
[西] 『西本願寺本万葉集(普及版)』主婦の友社 一九九三年
[R] 上田萬年 『類聚古集』 臨川書店 一九七四年
[紀] 井上光貞『日本書紀』 中央公論社 一九八七年
巻第二十六 斉明三年九月~五年一月条(有間皇子)
[文] 潘安仁(はんあんじん)「悼亡(たうばうの)(ばうの)詩(し)三(さん)首(しゅ)」
内田泉之助・網祐次『文選(詩篇)』明治書院 一九六三年 所収
[伊] 伊丹末(まつ)雄(お)『万葉集難訓考』国書刊行会 一九七〇年
[間] 間宮厚司『万葉難訓歌の研究』法政大学出版局 二〇〇一年
[永] 永井津(つ)記(ぎ)夫(お)『万葉難訓歌の解読』和泉書院 一九九二年
[上] 上野正彦『万葉集難訓歌 一三〇〇年の謎を解く』
学芸みらい社 二〇一六年
[菊] 菊沢季(すえ)生(お)『菊沢季生国語学論集』第三巻
『万葉集難訓歌考(上)』教育出版センター 一九八九年
[長谷川] 長谷川千秋
「「かな」と真仮名の連続と不連続を考えるために」
内田賢(まさ)德(のり)、乾善彦『万葉仮名と平仮名 その連続・不連続』
三省堂 二〇一九年 所収
[E] 中西進『万葉集事典』講談社 一九八五年
[広] 『広辞苑 第五版』岩波書店
[字] 『漢字源』学習研究社
[古] 『全訳古語辞典 第三版』 旺文社
(あさくら しんいち・天香具山をこよなく愛する者)
論文名:額田王の莫囂圓隣歌の試訓と意訳の提案
著者 :朝倉 慎一
:2026年 5月 1日(試し読み版)
底本から抜粋、誤記訂正と若干の加筆修正。
内容は、実質的に、底本と ほぼ同等。
書名 :万葉集難訓歌を明快に解く!
著者 :朝倉慎一
発行所:銀河書籍、発売元:星雲社
発行日:2025年10月21日 初版第1刷
© Shin'ichi ASAKURA 2025 Printed in Japan
ISBN:978-4-434-36742-7 , C0192
NCID:BD13589490(CiNii Books)