試し読み版:
朝倉 慎一
抄録
一、はじめに
二、原文の字の正しさ
三、先行研究の概観
四、三諸の歌の字義の訓読
五、表意兼表音文字
六、試訓と意訳の提案
●歌のまとめ
七、考察
八、まとめ
九、終わりに
参考文献
奥付
高市皇子の難訓歌「三諸の歌」(巻二・一五六)について、
試訓と、明確で詳細な全文意訳を提案する。
恣意的な義訓を避け、誤字の仮定は『己(き)』のみとする。
まず、明白な字義の訓読を示し、原文の字の正しさを確認するが、
五七調では読めない。
『表意兼表音文字』という掛詞的修辞法を導入することにより、
字義訓読の内容を保ったまま、五七調で読めると共に、
意訳は明確かつ詳細に多重の意味が通る。
三諸の歌は、題詞に沿う「慟哭の歌」であり、
「十市皇女の自殺を示唆している」ことが判明する。
高市(たけちの)皇子(みこ)の難訓歌、仮称で、三諸(みもろ)の歌(巻二・一五六)は、
訓に諸説があり[武田][NK]、まだ、定訓も、詳細な意訳も無い。
本稿は、試訓と、「明確で詳細」な意訳の「全文」を提案する。
本稿は、恣意的な「義訓」をしない。「誤字の仮定」は『己(き)』
で、妥当な理由で採用する。できるだけ「客観性」を確保する。
最初に、「字義の訓読」を提示する。非常に「状況に適切」な
訓読文ではあるが、五七調で読むには、訓が多過ぎる。そこで、
『表意(ひょうい)兼(けん)表音(ひょうおん)文字(もじ)』という掛詞を定義して、導入すると、
訓読の全てを包含したまま、五七調で読めるようになると共に、
意訳は「明確かつ詳細」に、「驚異的」な「多重」の意味が通る。
「全文」の意味は、「掛詞を展開した全て」という意味である。
三諸の歌は、題詞『十市(とをち)の皇女(ひめみこ)の薨(かむさ)りたまひし時』に沿って、
「慟哭(どうこく)の歌」であり、
「十市皇女の自殺を示唆(しさ)している」ことが判明する。
[武田] 武田祐吉『増訂 萬葉集全註釋』角川書店 一九五六年
[西] 『西本願寺本万葉集(普及版)』主婦の友社 一九九三年
[R] 上田萬年 『類聚古集』 臨川書店 一九七四年
[金] 藤原定信筆『金沢本万葉集』 二玄社 二〇〇四年
[紀] 井上光貞『日本書紀』 中央公論社 一九八七年
巻第二十九 天武天皇 天武七年四月条 (十市皇女)
[伊] 伊丹末(まつ)雄(お)『万葉集難訓考』国書刊行会 一九七〇年
[間] 間宮厚司『万葉難訓歌の研究』法政大学出版局 二〇〇一年
[生] 生田耕一『万葉集難語難訓攷(こう)』 春陽堂 一九三三年
[永] 永井津(つ)記(ぎ)夫(お)『万葉難訓歌の解読』和泉書院 一九九二年
[菊] 菊沢季(すえ)生(お)『菊沢季生国語学論集』第三巻
『万葉集難訓歌考(上)』教育出版センター 一九八九年
[広] 『広辞苑 第五版』岩波書店
[字] 『漢字源』学習研究社
[古] 『全訳古語辞典 第三版』 旺文社
(あさくら しんいち・天香具山をこよなく愛する者)
論文名:高市皇子の三諸の歌の試訓と意訳の提案
著者 :朝倉 慎一
:2026年 5月 1日(試し読み版)
底本から抜粋、誤記訂正と若干の加筆修正。
内容は、実質的に、底本と ほぼ同等。
書名 :万葉集難訓歌を明快に解く!
著者 :朝倉慎一
発行所:銀河書籍、発売元:星雲社
発行日:2025年10月21日 初版第1刷
© Shin'ichi ASAKURA 2025 Printed in Japan
ISBN:978-4-434-36742-7 , C0192
NCID:BD13589490(CiNii Books)